2013年度以前の調査・研究

都市自治体における効果的な人員配置のあり方に関する調査研究2006

 

都市自治体における効果的な人員配置のあり方に関する調査研究

1.趣旨・目的

新地方行革指針(2005年3月)においては、2005年度を基準とし、5年間で地方公務員総数について4.6%以上の純減目標が示された。単純な人員の削減は行政サービスの質の低下に直結する。自治体は必要最小限の人員で最大限の効果が図れるよう、無駄の削減に努め、限られた人材を効果的に活用していかなければならない。一方、自治体の現場レベルでは、住民ニーズの高度化・多様化により人員の削減どころか増員要望が常態化している等、所謂定員管理におけるマクロとミクロとでは矛盾が生じている部分もある。 
本調査研究においては、業務上の無駄を省き、適正な職員数で行政運営を行うために、効果的な人員配置(流動的な組織体制、適正な人員配置等)を実現するための方策等について紹介・報告していくことを目的とし、検討を行った。

2.調査研究の方法

本調査研究では、業務の効率化を図り職員数を大幅に削減した自治体、又は、業務上の無駄を解消し少ない人員で行政運営を行っている自治体を対象として、ヒアリング調査を実施した。そして、定数配分のフローを把握するとともに、定数管理や繁閑差の解消等、適正な職員数により行政を運営するための方策等について検討を行った。調査研究の成果として、平成19年3月に報告書『都市自治体の戦略的な組織定数マネジメント』を発刊した。報告書には調査研究の内容に加えて、理論的・学究的な観点から調査研究を進めるため、有識者のご寄稿を賜った。また、監修アドバイザーとして福島大学今井照教授に就任いただいた。

3.調査研究の概要・成果

(1)第1部 都市自治体の戦略的な組織定数マネジメントのあり方についての視点・論点

第1章
「戦略的な組織定数マネジメントのあり方」をテーマとして、従来の組織定数管理の課題・問題を指摘しつつ、自治体職員数の急減に伴い自治体業務の担い手が多様化し、なおかつ自治体行政が社会化していく中で、政策的かつ戦略的に組織定数管理を行うことの必要性と方法論について、福島大学行政政策学類の今井照教授に論じていただいた。

第2章
「都市自治体における弾力的な組織編成のあり方-チーム・ベースのフラット型組織編成の効用と導入のポイント-」をテーマとして、自治体の効果的・効率的な人員配置に資する弾力的な組織編成の手法のうち、組織のフラット化とチーム制を取り上げ、その取組の現状と課題を見極めつつ、円滑な導入のためのポイントについて、首都大学東京大学院の大杉覚教授に論じていただいた。

第3章
「定員管理の合理化に向けて」をテーマとして、自治体における定数査定業務が、職員数の適正化(必ずしも職員数が少ない状態を言うものではない)を図るために一定の明確なルールにしたがって行われ、かつ過不足なく事務量に見合うだけの人員数が算定されることの重要性について、東京大学社会科学研究所の中村圭介教授に論じていただいた。

(2)第2部 都市自治体の戦略的な組織定数マネジメントに関する事例研究 
第2部では仙台市、足立区、松山市、尼崎市、品川区、米子市、春日市、北上市、竹原市の9市における戦略的な組織定数マネジメントに関するヒアリング調査の結果を各章ごとに分けて紹介している。

第1章
仙台市は、平成17年定員管理調査結果における一般行政部門の職員数の削減割合が政令市中最も大きく、同部門の職員を2.74%削減している。本章では、仙台市の職員数削減への取組について、シーリングによる削減手法を中心に、報告している。

第2章
足立区は、財政比較分析表における住民1,000人あたりの職員数が、6.27人と特別区中最も少ない。本章では、足立区の職員数削減への取組について、枠配分による定数配分手法を中心に、報告している。

第3章
松山市は、定員モデル超過率及び類団超過率(修正値)がともにマイナスである。本章では、松山市の職員数抑制への取組について、業務量に応じた職員数の配分手法を中心に、報告している。

第4章
尼崎市は、平成16・17年の定員管理調査結果における職員削減合計数が、409人と政令市及び合併した市を除く全市区の中で最も多い。本章では、900人の削減目標に向けて大幅な職員数の削減が実施されている尼崎市の定員管理への取組について、報告している。

第5章
品川区は、平成16・17年の定員管理調査結果における職員削減合計数が199人であり、特に、一般行政部門職員数の削減合計数は、176名と政令市及び合併した市を除く全市区の中で5番目に多い。本章では、品川区の職員数削減への取組について、適正な定数の配分を可能にしている事業部制の導入を中心に、報告している。

第6章
米子市は、平成17年3月31日の合併により、それまでマイナスであった定員モデル超過率がプラスとなったが、類団比較においては、財政比較分析表上の住民1,000人あたりの職員数が5.47人と最も少ない。本章では、増加する行政需要に対し職員数を増やすことなく行政を運営してきた米子市の職員数抑制への取組について、報告している。

第7章
春日市は、民間調査による民間委託度が第1位であり、平成17年3月31日時点における住民1,000人あたりの職員数が、3.82人と全市区の中で最も少ない。本章では、春日市の少数による行政運営を可能にしている定員管理等の取組について、報告している。

第8章
北上市は、平成3年の合併により類団超過率を13%超過したが、以後、職員数の適正化に努め、平成17年4月1日時点では、類団超過率及び定員モデル超過率がともにマイナスとなっている。本章では、北上市の業務棚卸や業務量算定等を活用しながら、ミッション管理による運営での定数配分の取組を中心に、報告している。

第9章
竹原市は、平成16・17年の定員管理調査結果を併せた職員削減数の割合が11.8%(政令市及び合併した市を除く全市区の中で5番目に多い)であり、平成17年3月31日時点における住民1,000人あたりの職員数は7.46人と類団中最も少ない。本章では、少ない職員数である一方で大幅な削減を行っている竹原市の定員管理の実態について、報告している。

監修・アドバイザー
福島大学行政政策学類教授 今井 照

(敬称略、所属役職等は2007年1月現在)

4.調査研究の体制(人口減少時代の都市経営に関する研究会)

座 長 大西 隆 東京大学先端科学技術研究センター教授
委 員 上田 孝行 東京大学大学院工学系研究科教授
松谷 明彦 政策研究大学院大学教授
藻谷 浩介 日本政策投資銀行地域企画部参事役
森田 朗 東京大学大学院公共政策学連携研究部・教育部部長

(敬称略、委員は50音順、所属役職等は2006年7月現在)

 

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