2013年度以前の調査・研究

ローカルガバナンスに関する国際協力のあり方についての調査研究2005

 

ローカルガバナンスに関する国際協力のあり方についての調査研究

1.趣旨・目的

日本のローカルガバナンスに関する国際協力については、これまで総務省、JICAなどのほか地方自治体が研修などを実施してきた経緯がある。こうした活動を通じ、実際に相手国において制度化に結びつくなどの成果を挙げることが望ましいと考えられるものの、現状は必ずしも成果に結びついているとは言い難い。 
このような現状認識の下、国や地方自治体レベルの国際協力の成果や実情、諸外国の国際協力戦略の分析などを行い、今後、より成果に結びつく国際協力の具体的な方策を提言することを目的に調査研究を実施した。

2.調査研究の方法

総務省関係者、学識経験者などで構成された「ローカルガバナンスに関する国際協力のあり方研究会」(座長 村松岐夫 学習院大学法学部教授、ほか委員10名)を設置し、日本政策投資銀行地域政策研究センターと共同で調査研究を行った。国や国際機関、地方自治体による国際協力の取組や、諸外国における国際協力の取組について研究会での報告および議論により調査研究を進めた。地方自治体における国際協力の取組についてヒアリング調査を実施した。 
また、本調査研究の成果物として、平成18年3月に『ローカルガバナンスに関する国際協力のあり方 調査研究報告書』を発刊した。

3.調査研究の概要

(1) ローカルガバナンスに関する国際協力の意義 
世界銀行やUNDPなどの国際機関におけるガバナンスおよびローカルガバナンスの捉え方を分析し、本研究会におけるローカルガバナンスの定義を行った。国際協力がハード支援からソフト支援へと移行しつつあることなど、国際協力にかかる世界的な潮流の中で、ローカルガバナンスに関する国際協力を行うことの意義について検討した。

(2) 諸外国および国際機関におけるローカルガバナンスに関する国際協力の戦略 
アメリカやドイツおよび世界銀行、UNDPにおけるローカルガバナンス国際協力の戦略、内容、体制、手法について分析検討を行った。

(3) 日本のローカルガバナンスに関する国際協力の現状 
日本の国レベルでの取組および地方自治体の取組における、国際協力の内容、体制、課題、課題解決のための糸口などについて検討した。

(4)成果を生み出すローカルガバナンスに関する国際協力のあり方 
わが国のローカルガバナンスに関する国際協力の課題を明らかにするとともに、今後の国際協力のあり方や、成果を生み出すための工夫について検討した。また、わが国の地方自治制度、地方財政、キャパシティビルディング、公民連携、社会技術におけるローカルガバナンス国際協力について検討を行った。

4.提言

(1)ローカルガバナンス支援の目的・内容の明確化 
途上国の分権化の進展により、途上国へのローカルガバナンス支援の必要性は増している。しかし、日本のこれまでのODAは目的・戦略が不明確なため、国際協力の成果を問うことが困難であり、特にローカルガバナンス支援などとソフト的な知的支援はハードと異なり、国際協力成果が見えにくくなっている。
このため、今後途上国へのローカルガバナンス支援を推進するためには、目的、内容の明確化が不可欠であり、日本の国際協力戦略の中に、ローカルガバナンス支援の目的・内容を位置づけることが必要である。

(2)ローカルガバナンス支援の類型化 
日本の国際協力は米国や欧州諸国に比べて、その戦略性や歴史的厚みにおいて開きがあり、日本はガバナンスノウハウの蓄積と途上国の詳細な諸情報の把握において遅れをとっている。しかしながら日本には、現在途上国が抱える自治体の行政能力の未成熟、住民参加システムの機能不全、都市と農村の地域格差などの課題を半世紀前に対応してきた経験がある。米国や欧州諸国への遅れに対応し、貴重な日本の経験を途上国に伝えていくためには、支援の内容、働きかけの対象、支援対象、支援体制、支援手法を類型化し、支援をシステマティックに行うことが必要である。

(3)ローカルガバナンス国際協力に係るコーディネート機能の強化 
日本のODAは、従来から行政サイドにおいて援助業務を専担する府省がなく、異なる機能を有する13府省に分散しているため、関係府省の協議による合意形成を必要としている。この結果、相互連携や総合調整が難しく、府省間の合意が得やすい個別案件が中心となるなど、日本のODA全体での戦略的、総合的(包括的)、効率的な計画、実行に課題を残す結果となっている。
ローカルガバナンス国際協力の支援体制においては、支援に関係する様々な主体がそれぞれの役割を発揮するとともに、相互にネットワークを形成することが極めて重要である。関係者の連携を深め、情報を共有化し、適切な役割分担を行うためには、全体をコーディネートする組織が必要であり、関係機関の連絡調整の中核をなす機関として「ローカルガバナンス国際協力センター(仮称)」のような機関を設置することが必要である。

5.調査研究の体制(「ローカルガバナンスに関する国際協力のあり方」研究会)

委員長 村松 岐夫 学習院大学法学部教授・京都大学名誉教授
副委員長 市川 宏雄 明治大学公共政策大学院教授
委 員 石森 亮

日本政策投資銀行設備投資研究所地域政策研究センター室長(2005年5月まで)

磯崎 陽輔 総務省自治行政局国際室長(2005年3月まで)
金子 孝文 政策研究大学院大学教授
幸田 雅治 総務省消防庁総務課長
近藤 玲子 総務省情報通信政策局放送技術課課長補佐
高田 寛文 神戸大学大学院国際協力研究科教授
沼尾 波子 日本大学経済学部助教授
望月 幸泰 日本政策投資銀行設備投資研究所地域政策研究センター室長 (2005年6月から)
山崎 一樹 総務省自治行政局国際室長(2005年4月から)
山谷 成夫 (財)日本都市センター理事・研究室長
横道 清孝 政策研究大学院大学教授

(敬称略、委員は50音順、所属役職等は2006年3月現在)

 

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