報告書

都市自治体における市民参加と合意形成 ―道路交通・まちづくり・コミュニティ―

都市自治体における市民参加と合意形成
―道路交通・まちづくり・コミュニティ―



A5判 332p
定価1100円(本体価格1000円+税10%)

 

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近年、多くの都市自治体では、超高齢・人口減少社会の到来、地域住民のつながりの希薄化により地域コミュニティの衰退が指摘され、その維持が課題となっている。同時に、都市自治体においては、合併、財政上の問題などを原因として地域へのきめ細かな公共サービスの提供を維持することが困難になってきている。このような現状の中、行政と市民との参加、協働が重要視されるようになり、地域で活動する諸団体、個人などを制度の枠内に位置付け、住民が政策の形成過程に参加する場面が増えてきている。

 

特に、地域のまちづくり、地域の交通などの分野において、住民が自ら政策形成に参画し、地域において役割を担うことが求められるようになってきている。例えば、都市計画分野では、2000年に地区計画の申出制度が、2002年には都市計画提案制度がそれぞれ創設された。また、交通行政の分野では、2013年に公布、施行された交通政策基本法で、交通に関する施策の推進について住民の連携、協働が規定されている。さらに、各自治体でコミュニティゾーンの設置及び老朽歩道橋の撤去などに関する条例やガイドライン等を制定する動きが広がっている。それらの条例等では、住民からの発案を受ける仕組みや住民が意思決定に関与することができる規定が盛り込まれることが多い。

 

一方、特にまちづくりや地域交通のルールづくりの場面においては、関係者の増加、多様化に伴い、住民間の利害の対立が生じる等、調整が複雑になることが考えられる。そのため、調整を図るためにプロジェクトに応じて臨時に構築されたものではなく、ある程度の位置付けを受けた住民組織がより多くの住民の意思を反映させて調整を図ることが重要となってくると考えられる。また、こうした調整過程、組織内の意思決定過程を「見える化」することによって、様々な経験を共有することが重要であると考えられる。

 

そこで、公益財団法人日本都市センターでは、学識者及び都市自治体職員により構成される「都市自治体のコミュニティにおける市民参加と合意形成に関する研究会」(座長 名和田是彦 法政大学教授)を2015年に設置し、調査研究を進めることとした。研究会では、( 1 )協議会型住民自治組織における意思決定過程の一般化の検討、( 2 )まちづくり(地区計画等)、地域の道路交通に関する計画の策定における住民組織の参加事例、( 3 )ドイツをはじめとする諸外国における住民組織の意思決定過程の分析についての各項目を主な論点とし、先行研究や施策、研究会委員の知見及び経験をもとに意見交換及び議論を行ってきた。本報告書はその研究成果を取りまとめたものである。

 

序章

コミュニティにおける市民参加と合意形成

(法政大学法学部教授 名和田 是彦)

 

第1部 協議会型住民自治組織と市民参加

第1章 協議会型住民自治組織の類型と合意形成過程の一般化

(法政大学法学部教授 名和田 是彦)

 

第2章  「ながのご縁を~信都・長野市」の住民自治協議会による市民参加と合意形成について

(長野市企画政策部人口増推進課長 藤橋 範之)

 

第3章 ドイツにおける参加型都市内分権―ブレーメン市の地域評議会法の新展開―

(法政大学法学部教授 名和田 是彦)

 

第4章 横浜市泉区における行政区独自のしくみづくり

(公益財団法人日本都市センター研究員 三浦 正士)

 

第5章 豊田市現地調査報告

地域自治システムの運用における市民の合意形成

(公益財団法人日本都市センター研究員 杉山 浩一)

 

第6章 東近江市現地調査報告

まちづくり協議会の条例上の位置づけと組織体制及び行政の支援体制

(公益財団法人日本都市センター研究員 杉山 浩一)

 

第2部 まちづくり分野における市民参加と合意形成

第7章 協議会型住民自治組織による都市計画策定への参加の現状と課題

(公益財団法人日本都市センター研究員 釼持 麻衣)

 

第8章 住民組織の合意形成とまちづくり協議会の意義

―真野地区の歴史的展開に着目して―

(駒澤大学法学部教授 内海 麻利)

 

第9章 フランスPLU の策定プロセスにおける地域住民の意思の反映

―コンセルタシオンにおける住区評議会の役割に着目して―

(駒澤大学法学部教授 内海 麻利)

 

第10章  金沢市現地調査報告

まちづくり条例及び歩けるまちづくり条例による住民合意の実際

(公益財団法人日本都市センター研究員 杉山 浩一)

 

第3部 道路交通分野における市民参加と合意形成

第11章  少子高齢社会におけるコミュニティとプロジェクト型協働事業

―柏市のコミュニティ政策と「6国プロジェクト」を手がかりに―

(東京経済大学現代法学部教授 羽貝 正美)

 

第12章  生活道路整備の計画策定に対する区民の参加事例―文京区の取組み―

(文京区土木部道路課長 佐久間 康一)

 

第13章  北米の交通静穏化プログラムにみる市民参加と合意形成

(埼玉大学大学院理工学研究科准教授 小嶋 文)

 

第14章  北九州市現地調査報告

生活幹線道路整備事業及び黒崎みち再生事業における市民の参加

(公益財団法人日本都市センター研究員 杉山 浩一)

 

参考資料

「都市自治体のコミュニティにおける市民参加と合意形成に関する研究会」

研究会・現地調査 日程概要研究会議事概要

 

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