都市自治体におけるファシリティマネジメントの展望
都市自治体におけるファシリティマネジメントの展望
A5判 210p
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高度経済成長期に数多くの公共施設・インフラ(以下、「公共施設等」という。)が全国各地で整備されたが、それから50年近く経過しており、今後その多くは耐用年数を迎え老朽化していくことが予測される。一昨年末に発生した中央自動車道笹子トンネルでの天井板落下事故のような深刻な事態を避けるためにも、公共施設等の安全性確保に向けた取組みが急務とされており、都市自治体においてもその適切な維持管理や更新が求められている。
一方で、少子高齢化の進行により、税収入の減少・低迷と福祉関連支出の増加が懸念されており、維持管理費や更新費を十分に確保することは困難な状況にある。さらに、平成の大合併を経験した都市自治体では、機能的に重複した公共施設を複数保有することになったため、財政負担が増加している。このような社会構造の変化や近年の都市自治体の厳しい財政状況を勘案すると、公共施設等の配置や総量の適正化、用途やあり方の見直しを行う必要があると考えられる。
近年、公共施設等の効率的な維持管理や適切な保有に向けて、都市自治体をはじめとする全国の自治体で独自に保全計画の策定や施設の再編などが行われ、ファシリティマネジメント・アセットマネジメント(以下、「ファシリティマネジメント等」という。)を導入する動きが見られる。また、国においても、老朽化対策、管理適正化及び財源確保についての様々な対策が講じられている。
しかしながら、ファシリティマネジメントの統括部署や維持管理の担当部署における人材の不足、関連する情報の未整備や縦割りの組織体制などが課題となり、ファシリティマネジメント等の導入や推進に苦慮する自治体が多い。
このような状況を踏まえ、当センターでは、2013年度、都市自治体における公共施設等の維持管理の適正化や公共施設の再編に関する課題と対策について調査研究を行うこととした。
調査研究を進めるに当たり、学識者と都市自治体職員からなる「都市自治体におけるファシリティマネジメントに関する研究会」(座長 中川雅之 日本大学経済学部教授。以下、「研究会」という。)を設置した。研究会では、公共施設とインフラの両方に焦点を当て、それぞれの現状や課題について議論を行った。加えて、本調査研究に関連する座長・委員のこれまでの研究成果の報告、委員の所属する都市自治体の取組みの報告、全国の先進的な自治体の取組みについての現地調査等を通じ、今後のファシリティマネジメント等のあり方について調査研究を進めてきた。本報告書はその研究成果を取りまとめたものである。
序論
(日本大学経済学部教授 中川雅之)
第1部 公共施設・インフラの現状
第1章 公共施設・インフラの実態
(首都大学東京都市環境学部特任教授 山本康友)
第2章 長野市における公共施設見直しへの取組み
(長野市総務部行政管理課長 竹内裕治)
第3章 浜松市におけるファシリティマネジメン卜
(浜松市財務部資産経営課長 那須田政廣)
第2部 公共施設・インフラの課題と対策
第1章 課題と対策 一総論一
(日本大学経済学部教授 中川雅之)
第2章 ファシリティマネジメン卜推進のための組織と人材
(専修大学法学部教授 藤田由紀子)
第3章 財政上の課題と今後の社会情勢
(一橋大学大学院法学研究科教授 木村俊介)
第4章 ファシリティマネジメン卜を進めるための新たな取組み
1 住民と議会
2 自治体間連携
(日本大学経済学部教授 中川雅之)
3 ICTシステム
(首都大学東京都市環境学部特任教授 山本康友)
第3部 先進自治体における取組み 一事例報告一
(公益財団法人日本都市センター研究員 石田雄人)
第1章 神奈川県横浜市
第2章 福岡県福岡市
第3章 千葉県流山市
第4章 神奈川県秦野市
第5章 秋田県美郷町