新時代の行財政改革の視点と手法に関する調査研究2001
新時代の行財政改革の視点と手法に関する調査研究
研究のテーマ
「新時代の自治体の行財政運営システム ―分権改革後の新しい潮流に備えて」
1.調査研究の趣旨
今次の分権改革を振り返った「地方分権推進委員会最終報告」(平成13年6月)において、財政分権への道筋は示されたが、財政分権は依然として残された主要な課題である。自治体の自立的な行財政運営を保障し、分権型社会を実現するには、財政面における自己決定権と自己責任、すなわち、いわゆる「歳入の自治」をより強化することが必要であり、税源の偏在が少なく、安定性を備えた地方税の拡充を基本とした改革が要請されている。
これらを進めながらも、近年の厳しい経済環境を背景として、自治体の財政においては、引き続き大幅な財源不足や多額の借入金残高等を伴う厳しい財政運営をせざるを得ない状況にあり、更なる行財政改革に取組む一方で、質の高い公共サービスを選択的に供給することが求められている。すなわち、行政組織や行財政運営のスリム化を図りつつ、歳出を抑制しながら、透明性や公正が確保された、質の高いサービスを供給することが、自治体に要請されているのである。
このような中で、近年、注目を浴びているのが、行政と市民、企業、NPO・NGO、ボランティア、コミュニティ等とのパートナーシップの確立であり、これによって地域の「ガバナンス」を高め、それぞれの主体の役割分担と責任において、公共的なサービスを創出・供給し、政策に取組もうという姿勢である。ローカル・ガバナンスの哲学に基づいた自治体の行財政システムを確立し、分権型社会に対応していくことが、全国の自治体に要請されている。そこで、本年度においては、主に以下の3つのポイントから、アプローチすることとした。
<「新しい公共管理」(NPM)と自治体の行財政改革>
第1に、「新しい公共管理」(NPM)と、この思潮や手法に係る自治体の選択である。ボランタリー・セクターとのパートナーシップによって、質の高い公共サービスを選択的に供給していく一方で、近年、NPMの思潮の下で推し進められてきた、さまざまな手法について、あらためてそのメリットと問題・課題を確認し、各自治体の主体的選択に基づいた導入と活用が求められる。ここ数年来、積極的に導入が進められてきた行政評価、バランスシート導入等による公会計システムの改革等の成果を今一度点検し、自治体の自主的な行財政運営改革に資するように、そのあり方等を再確認していく必要がある。
<ボランタリー・セクターと自治体のパートナーシップ>
第2に、ボランタリー・セクターとのパートナーシップの確立である。今日、社会・経済構造の大転換が叫ばれるなかで、分権型社会における市民参画型のパートナーシップによる公共的活動が、大きくクローズアップされている。これには、これまで以上の地方分権、行財政改革、規制緩和が必要とされる一方で、コミュニティ、NPO・NGOをはじめとする市民参加型の住民・市民組織が公共サービスを担い、社会的セーフティネット構築に参画し得るよう、その活動をささえる仕組みの整備が必要である。
<ITへの対応、電子自治体>
第3に、それらの行財政改革やパートナーシップ確立の手段としての、あるいは、地域の創造的な情報発信の手段としての情報通信技術(IT)への対応である。「情報通信技術(IT)革命に対応した地方公共団体における情報化推進本部(地域IT推進本部)」の決定による「地方公共団体における情報化施策等の推進に係る指針」及び「地域IT推進のためのアクション・プラン」に基づき、ITを活用した自治体の事務の効率化・住民サービスの高度化や魅力ある地域づくりに向けての総合的・戦略的推進が求められている。電子政府・自治体の実現、さらには情報通信基盤の整備、各種の情報システムやネットワークの構築等に向けて、そのあり方やそれらの活用に伴う自治体の行財政運営および地域社会への影響等について、議論を進めていく必要があるだろう。
2.研究項目
<1> | 「財政分権」の方向と方策について(地方分権委員会最終報告に関連して) |
地方分権推進委員会最終報告を踏まえつつ、今次分権改革において残された「財政分権」の課題に焦点をあてて、報告・討議する。 | |
<2> | 新しい公共管理と自治体の行財政運営改革 |
(1)自治体におけるNPMの手法活用状況の再確認 行政評価、外部化(アウトソーシング、PFIや公設民営方式等)などの動向が、ここ数年でどれだけ普及し、自治体の行財政改革にどう活用されているかを再確認する。 |
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(2)自治体の予算・会計システムのあり方 経営という観点から、行政コスト計算書、バランスシートの作成等の自治体における財務管理のあり方が、どのように見直されつつあるかを確認する。 |
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<3> | ボランタリー・セクターとのパートナーシップ |
外部化の有力なチャンネルである、コミュニティ、NPO、NGO、ボランティア等のボランタリー・セクターとのパートナーシップに焦点をあて、その活動を促進する仕組みのあり方等について、報告・討議を行う。 | |
<4> | ITへの対応、電子自治体論 |
行財政運営のスリム化や組織改革、情報発信、市民等とのコミュニケーション、行政の透明化等の手段として期待されるITへの対応について、現状、メリット、その問題点や課題等について、報告・討議を行い、電子自治体のあり方を探る。 |
3.研究の体制(都市税財政研究会)
委員長 | 宇田川璋仁 | 明海大学経済学部教授 |
副委員長 | 黒川 和美 | 法政大学経済学部教授 |
〃 | 西野 萬里 | 明治大学商学部教授 |
委員 | 飯野 靖四 | 慶応義塾大学経済学部教授 |
〃 | 一河 秀洋 | 那須大学学長 |
〃 | 井堀 利宏 | 東京大学大学院経済学研究科教授 |
〃 | 大浦 一郎 | 明治学院大学経済学部教授 |
〃 | 大村 達弥 | 慶応義塾大学経済学部教授 |
〃 | 加藤 三郎 | 東京大学名誉教授 |
〃 | 金井 利之 | 東京都立大学法学部助教授 |
〃 | 金子 宏 | 東京大学名誉教授 |
〃 | 金子 勝 | 慶應義塾大学経済学部教授 |
〃 | 喜多 登 | 明治大学名誉教授 |
〃 | 神野 直彦 | 東京大学大学院経済学研究科教授 |
〃 | 高山 憲之 | 一橋大学経済研究所教授 |
〃 | 竹内 一樹 | 日本大学経済学部教授 |
〃 | 田中 一行 | 明海大学不動産学部教授 |
〃 | 田村 紀之 | 二松学舎大学国際政治経済学部教授 |
〃 | 辻 琢也 | 政策研究大学院大学助教授 |
〃 | 中里 実 | 東京大学大学院法学政治学研究科教授 |
〃 | 西村紀三郎 | 駒沢大学名誉教授 |
〃 | 野呂 昭朗 | 立教大学経済学部教授 |
〃 | 林 正壽 | 早稲田大学社会科学部教授 |
〃 | 原田 博夫 | 専修大学経済学部教授 |
〃 | 肥後 和夫 | 成蹊大学名誉教授 |
〃 | 廣瀬 克哉 | 法政大学法学部教授 |
〃 | 深谷 昌弘 | 慶応義塾大学総合政策学部教授 |
〃 | 星野 泉 | 明治大学政治経済学部助教授 |
〃 | 水野 忠恒 | 一橋大学大学院法学研究科教授 |
〃 | 武藤 博己 | 法政大学法学部教授 |
〃 | 望月 正光 | 関東学院大学経済学部教授 |
〃 | 横田 信武 | 早稲田大学商学部教授 |
〃 | 横山 彰 | 中央大学総合政策学部教授 |
〃 | 吉田 浩 | 東北大学大学院経済学研究科助教授 |
〃 | 和田 八束 | 関東学院大学経済学部教授 |
〃 | 林 省吾 | 総務省自治財政局長 |
〃 | 瀧野 欣彌 | 総務省自治税務局長 |
〃 | 木村 功 | 総務大臣官房審議官 |
〃 | 石田 直裕 | 総務大臣官房審議官 |
〃 | 小室 裕一 | 総務大臣官房審議官 |
〃 | 河野 栄 | 総務省自治財政局財政課長 |
〃 | 岡崎 浩巳 | 総務省自治税務局企画課長 |
専門委員 | 藤田 幸雄 | 日本農業集落排水協会理事・自治大学校講師 |
〃 | 櫻田 順一 | 千葉市財政局財政部参事 |
〃 | 白柳 和義 | 八王子市企画政策室参事 |
〃 | 清水 一男 | 横浜市財政局財政部長 |
〃 | 伊藤 久男 | 川崎市財政局財政部長 |
〃 | 小林 繁 | 横須賀市財政部財政課長 |
(敬称略、委員は50音順、平成14年3月現在)