2013年度以前の調査・研究

都市自治体行政の専門性に関する調査研究2010

都市自治体行政の専門性に関する調査研究

1.趣旨・目的

都市自治体を取り巻く社会環境の複雑・高度化や地方分権の進展等に伴い、都市自治体は、総合行政の実施主体として地域における今日的な行政ニーズに対応するため、資金的・人員的な資源に制約を抱えるなかでこれらの資源を総動員して効果的に取り組むことが求められている。その際、地域のニーズ・課題を把握し、その対応策を企画立案して効果的・効率的に実施することを可能にする能力・知識・経験(「組織として」又は「職員として」の両義あり)、つまり、都市自治体行政の「専門性」が強く求められている。 このような問題意識の下、当センターでは、2009~2010年度の2か年にわたる自主調査研究として「都市自治体行政の専門性に関する調査研究」を実施した。

2.調査研究の方法

本調査研究を進めるにあたって、2009年9月に「都市自治体行政の専門性に関する研究会」(座長 稲継裕昭 早稲田大学大学院公共経営研究科教授)を設置した。同研究会では、①研究会における意見交換、②有識者・関係機関へのアンケート・ヒアリング等を通じて調査研究を進め、2010年3月に都市自治体人事担当課アンケート結果を『都市自治体行政の専門性確保に関する調べ』として取りまとめたほか、2011年2月に報告書『都市自治体行政の「専門性」―総合行政の担い手に求められるもの―』を刊行した(後述3)。

3.調査研究の概要・報告書の構成

本調査研究では、都市自治体行政における「専門性」として、特別な資格等に基づく技能のみならず、関係者と連携する能力など今までは行政内部において当たり前のこととして意識されていなかった能力についても評価し明らかにした。また、「人」のみならず「組織」として有する能力・知識・経験についても着目したところである。 上記報告書では、本調査研究の内容を次の4部構成により取りまとめた。

(1)都市自治体行政の専門性に関する主要課題

第1部では研究会の各委員から以下のテーマについて論考をいただき、都市自治体行政の専門性に関する主要課題について様々な視点からの分析を行うとともに、総合行政の実施主体である都市自治体行政の「専門性」とは何か明らかにした。

○序 章 都市自治体行政における「専門性」

○第1章 地方分権化と自治体職員の専門性

○第2章 都市自治体の行政組織と専門性―瀬戸内市と市川市の事例から

○第3章 都市自治体の権限移譲と専門性について

○第4章 都市自治体における専門性向上のために―人事管理と経営における努力の方向

○第5章 専門性を有した自治体職員の育成と、自治体間移動の可能性

(2)包括的事項について

第2部では、職員のあり方及び組織のあり方の両面をにらんで都市自治体行政の専門性について包括的に見渡した。 まず、元内閣府事務次官の山本信一郎氏に、自治体職員の専門性志向や強み、市長が自治体職員に求める専門性についてなど「都市自治体行政の専門性への期待」を述べていただいた。 また、専修大学法学部准教授の藤田由紀子氏に「自治体(技術系)行政職員の専門性―専門性の定義と視角を中心に―」をテーマとして、専門性の高い行政組織に必要な能力や自治体職員の能力などについて中央省庁と自治体との比較分析をしていただいた。 以上のほか、都市自治体行政における専門性の必要性や専門性不足がもたらすリスク、また専門性を確保・育成するための手法などに関する議論を行った。

(3)組織の専門性をめぐって

第3部では、都市自治体行政の専門性について、特に組織のあり方に比重を置きアプローチした。 まず、神奈川大学法学部教授の出口裕明氏より「都市自治体の広域連携と行政執行の専門性」をテーマとして、専門性確保の観点からの広域連携制度活用のあり方として、特に税務及び監査分野での制度の適性や課題について紹介いただいた。 このほか、業務の外部化やモニタリング、組織のフラット化・動態化など組織の専門性に着目した議論を行った。

(4)職員の専門性をめぐって

第4部では、都市自治体行政の専門性について、特に職員のあり方に比重を置きアプローチした。 まず、早稲田大学大学院政治学研究科博士後期課程(茨城県総務部人事課係長)の大谷基道氏より「自治体職員の専門性と官民人材交流」をテーマとして、職員アンケート調査の内容からみた自治体職員の専門性や自治体職員の民間企業への転職可能性及び民間人材活用の傾向といった官民人材交流のあり方について述べていただいた。 また、職員採用の工夫、職員のキャリアデザインや研修など職員の専門性に着目した議論を行った。

4.調査研究の体制(都市自治体行政の専門性に関する研究会)

座 長 稲継 裕昭 早稲田大学大学院公共経営研究科教授
委 員 八代 充史 慶応義塾大学商学部教授
平野 隆 一橋大学大学院法学研究科教授
伊藤 正次 首都大学東京大学院社会科学研究科教授
出雲 明子 東海大学政治経済学部専任講師

(敬称略、所属役職等は2011年2月現在)

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