ポストコロナの都市交通・まちづくりに関するワーキンググループ
1.ワーキンググループの位置づけ
2020年に世界的な流行が発生した新型コロナウイルス感染症と、感染拡大防止のための緊急事態宣言などによる経済活動の自粛・停滞は、さまざまな分野に影響を及ぼした。都市自治体においては、感染拡大を予防しながら社会経済の回復を図り、新たな日常を作り上げていく努力が進められている。日本都市センターではこうした観点から「感染症への対応を踏まえた都市政策等に関する調査研究」を実施しているが、特に地域公共交通分野については、コロナ禍によって交通需要が大きく縮小し、全体的に大きな打撃を受けていることから、ワーキンググループを設置し、検討を行うこととした。
2.都市交通・まちづくりに関わる背景・課題
都市自治体・都市圏の移動を担う地域公共交通は、特に地方部において、コロナ禍以前より人口減少・高齢化やモータリゼーションによって需要が縮小しており、一方では生産年齢人口の減少に伴う働き手(特に運転手)の不足によって供給も不安定になっていた。従来のように事業者の独立採算を前提とした制度では、公共交通の維持は難しい状況にあるが、持続可能な都市の構造(コンパクトシティ)への転換、脱炭素に代表される地球環境問題への対応、自動車依存からの脱却(自動車を持たない人の移動手段の確保)など、公共交通が担う役割は大きいことから、地域公共交通を維持・活性化するための制度が徐々に整えられ、主体的に公共交通政策に取り組んでいる都市自治体では、一定の成果を挙げつつあった。
コロナ禍によって直接的に利用者が減少したことで、事業者の経営が危機に瀕しており、短期的には事業者の経営支援が求められるが、これは公共交通事業に限らず、観光や飲食、興行など様々な業種と共通する問題である。公共交通分野においては、コロナ禍以前から想定されていた、数年から数十年先の利用者の減少、収益の悪化などの状況が、急速に到来してしまった。感染症流行の収束によって一定程度回復する需要もあるが、生活様式の変化によって構造的に消失してしまった需要も大きいものと考えられる。これに対して求められる対応策は、短期的なコストカットや増収策だけではなく、公共交通網の再編など中長期的視点に立った公共交通政策のより積極的な展開であろう。
本研究会では、こうした中長期的な公共交通網の再編の視点から、近年具体的な事業・施策を行った、あるいは行われる予定の自治体の事例を対象として、コロナ禍による影響、今後の展望や課題などについて、学識者を交えた議論を行うこととする。
3.調査研究成果の公表
研究会を開催し、その講演・議事録を本ホームページにて公開する。4.テーマに関する先行研究
都市自治体のモビリティに関する研究会(2016~2017年度)5.研究会座長・委員名簿
座長 | 谷口 守 | 筑波大学システム情報系社会工学域 教授 |
委員 | 南 聡一郎 | 国土交通省国土交通政策研究所 主任研究官 |