協働型の地域自殺対策と自治体-持続可能なまちづくりへのアプローチ-
A5判 190p
定価1,650円(本体価格1,500円+税10%)
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我が国の自殺対策は、2006年に自殺対策基本法が制定されて以降、大きく前進した。それまで「個人の問題」として認識されがちであった自殺は広く「社会の問題」と認識されるようになり、国を挙げて自殺対策を総合的に推進した結果、自殺者数は3万人台から2万人台に減少する等、着実に成果を挙げている。そして、施行から10年の節目に当たる2016年、自殺対策基本法の法改正により、自治体に対し地域自殺対策計画の策定が義務づけられるとともに、自殺対策に関して基礎自治体の責務が明らかにされた。また、2017年の自殺対策大綱の改定では、「地域レベルの実践的な取組みをPDCAサイクルを通じて推進する」ことが謳われた。地域自殺計画の策定により、各自治体では自殺対策の必要性が改めて認識されるとともに、自殺対策大綱に基づく支援策を中心に様々講じているところであるが、都道府県・市町村の連携や取組の連続性、NPO・民間機関等との連携、社会的孤立対策等、諸課題については十分に検討できているとは言い難い。
また、2022年の自殺対策大綱の改定では、近年、コロナ禍を背景とした女性や小中高生の自殺者数が増加し、小中高生の自殺者が過去最多となったことやSNS利用による自殺への誘惑等、新たな自殺予防の取組も求められているところである。
行政の最大の責務は住民の命を守ることであり、自殺対策はまさに住民の命を守る取組みそのものである。
総合的な自殺対策を推進する上で、地域で総合行政を実施し、地域住民と身近で関わっている自治体は重要な役割を担っている。これからの都市自治体の自殺対策のあり方を展望する必要性は高い。
以上のことから、日本都市センターでは2023年度に学識者や自治体実務担当者からなる「都市自治体の自殺対策のあり方に関する研究会」(座長:南島和久 龍谷大学政策学部教授)を設置し、調査研究を進めてきた。
研究会で話し合われた論点は、都市自治体の自殺対策推進体制のあり方、都市自治体内部や自治体間、NPO、民間機関、地域住民等との連携のあり方、国の自殺対策の問題点と都市自治体への影響、子どもの自殺対策、自殺対策の評価のあり方等、広範にわたった。それらの論点を巡る議論と各執筆者が持つ問題意識が融合することにより、最終的には、都市自治体が地域の自殺に対していかなる政策を実施すべきか、実施した事業をどのようにして評価し改善していくか、自殺対策を推進するために庁内、庁外、地域の体制をどのように整備していくか、さらには異なる政策分野間の連携等、様々な主体や要素が結び付く「連携」の重要性に議論が及んだ。
本報告書は、上記の議論の成果及びゲストスピーカーとして招聘した有識者・自治体職員の講演に加え、ヒアリング調査の結果を取りまとめたものである。
序章 都市自治体が自殺対策に取り組む意義と課題 PDF
龍谷大学政策学部教授 南島 和久
第1章 日本における自殺対策の展開 PDF
南山大学社会倫理研究所第一種研究所員
南山大学法学部法律学科准教授 森山 花鈴
第2章 こどもの自殺対策をどう進めるか
―政策的枠組みと都市自治体の役割- PDF
いのち支える自殺対策推進センター 代表理事 清水 康之
第3章 子どもの自殺対策の現状と課題 PDF
一般社団法人高橋聡美研究室代表 高橋 聡美
第4章 子どもの自殺予防
-学校を拠点とする取組みを中心に- PDF
九州産業大学学術研究推進機構科研費特任研究員 窪田 由紀
第5章 自治体における自殺対策の取組み
-久慈市・東松島市・座間市・京丹後市の事例から- PDF
日本都市センター研究員 佐々木 伸
第6章 船橋市の自殺対策の取組み PDF
船橋市健康部健康政策課 主任技師 伊藤 理恵
第7章 川崎市の自殺対策の取組み PDF
川崎市総合リハビリテーション推進センター企画・連携推進課 橋本 貢河
第8章 自殺対策における自治体職員のあり方 PDF
川崎市総合リハビリテーション推進センター所長 竹島 正
第9章 自殺対策の評価のあり方 PDF
龍谷大学政策学部教授 南島 和久