総合的な都市経営に関する内外比較研究
1.調査研究の趣旨
欧州の諸都市においては、エネルギー、交通、インフラ、地域再生などの分野において、出資団体や都市圏などとの連携を通じて、地域経済振興も念頭に入れた形で都市経営に取り組んでいる。同時に、市民自治体といった理念を掲げて、市民との協働、市民参加を行いながら地域の合意形成を図っており、こうした取組みが地域課題の解決により大きな役割を果たすようになっている。我が国でも、こうした取組みを参考にする都市もでてきており、総合的な都市経営のあり方について、ワーキンググループを設置し国内外の比較研究を行う。
2.調査研究の概要
学識経験者及び都市自治体職員からなる「総合的な都市経営(エネルギー・交通等)のあり方研究会」(座長 諸富徹・京都大学大学院経済学研究科教授。以下「研究会」という。)を設置し、調査研究を進めることとした。研究会では、以下の検討事項について調査を行うこととしている。
<主な検討事項(予定)>
A.新たな都市経営の理念や仕組みとは
- コンツェルン都市、NSM(KSM)、給付行政(=非権力的な生活基盤行政)など
→新たな都市経営のコンセプト(理念・理論)としての検討
(=多様な組織(公社・企業)への出資、連結決算、一般会計繰入、人材派遣の考え方)
→欧州の都市モデル(ストラスブール等)がどこまで我が国に応用可能か?
→従来までの我が国の自治体公社のあり方にも示唆を提供
→従来までのNPMの考え方(=英米型/北欧型、NSM・KSM(ドイツ型))との比較(異同)
- 都市の総合的な施策の計画・決定・実施への住民参加(=市民自治体)
→都市の生活基盤サービスの維持確保に向けた住民参加の諸相(=諸外国ではどうか)
→自治体が事務機構としてのみならず多様な出資団体と連携、合意形成や制御を行う
- 企業会計や「投入(Input)-算出(Output)」サイクルとともに、「投入-産出-成果」(Outcome)のサイクルで予算過程をまわす など(例:スウェーデンなどの北欧諸国)
B.都市自治体のインフラ政策(エネルギー政策、交通弱者対策としての交通政策など
- 広義のインフラ政策(エネルギー政策など)による地域再生への寄与
- いくつかの都市交通政策は、都市再生と交通弱者の移動手段確保に寄与(Maasなど)
→障害者・失業者・高齢者・子ども等の交通弱者の為に必要な生活インフラとしての交通
- 広義のインフラ政策(エネルギー政策、交通弱者対策としての交通政策など)における住民参加・市民自治体(=例:瑞、独、仏でどう異なるか)
※ 都市自治体の地域再生政策(=市と公社の連携→ただし狭義の都市計画ではない))
- 都市再生における公民連携(=自治体の中間支援組織を通じた民との連携)
- 都市再生(=市と公社の連携)による経済効果
- 都市再生における住民参加・市民自治体(=例:瑞、独、仏でどう異なるか)
3.研究成果の公表
本調査研究の成果をまとめ、2022年3月に報告書を刊行する予定である。
4.テーマに関する先行研究
<過去の調査研究>
・分権型社会を支える地域経済財政システム研究会WG(ワーキンググループ)
(2015~2016年、日本都市センター研究室)
5.研究会委員名簿
座 長 | 諸富 徹 | 京都大学大学院経済学研究科教授 |
委 員 | 宇野 二朗 | 横浜市立大学学術院国際総合科学群教授 |
〃 | 関口 智 | 立教大学経済学部教授 |
〃 | 倉地真太郎 | 明治大学政治経済部専任講師 |
〃 | 南 聡一郎 | 国土交通省国土交通政策研究所 研究官 |
〃 | 石川 義憲 | 日本都市センター理事・研究室長 |
(2020年6月現在)