気候変動に対応した防災・減災のまちづくりに関する研究会
1.調査研究の主旨
世界的な気候変動の影響から、豪雨や土砂災害などの激甚な自然災害が全国各地で頻発している。これを受け、国は「流域治水関連法」を制定し、流域の関係主体が連携し総合的に治水に取り組む「流域治水」の考え方を提唱し、各地で事業が進められつつある。流域治水を実現するためには、河川に関連した構造物や施設によるハード面での対策だけでなく、災害リスクが高いエリアの開発抑制による被害の回避・低減、農地や緑地などの保水機能の保全による河川への雨水流出の抑制など、土地利用による総合的な対策も求められる。一方で都市自治体においては、人口減少社会に対応したコンパクトな都市構造への転換を目指し、立地適正化計画の策定などに取り組んでいる。立地適正化計画には防災指針が位置付けられ、災害リスクの高い土地の利用を限定する規定が盛り込まれた。しかし、計画による規制・誘導の実効性の観点、専門性(河川・治水・環境・都市計画・土地利用など)を備えた人材確保や組織体制の観点、国・都道府県・市町村の役割分担の観点など、防災リスクに対する総合的な対策の実現にあたっては課題が多い。
全国市長会と日本都市センターでは、2016~17年度にかけて共同で「土地利用行政のあり方に関する研究会」を設置し、都市計画区域だけに留まらず農地や山林なども含めた市域全体の一元的・包括的な土地利用行政のあり方について調査・研究を行った。本研究会では、土地利用に関しては先行研究の成果を踏まえつつ、流域治水の実現に向けた防災・減災のまちづくりにおける論点を中心に、調査・研究・議論を行う。
2.調査研究の概要
学識経験者からなる「気候変動に対応した防災・減災のまちづくりに関する研究会」(座長:内海麻利 駒澤大学法学部教授。以下「研究会」という。)を設置し、調査研究を進めることとした。研究会では、以下の検討事項について調査を行うこととしている。
(1) 都市自治体における総合的な土地利用を通じた防災・減災の計画のあり方
(2) 土地利用規制・誘導を実施するにあたっての課題
(3) 広域にわたる自治体間の連携・調整のあり方・課題
(4) 平常時、被災時、復興時それぞれに対応する自治体の組織と人材
3.研究成果の公表
本調査研究の成果は、『水害多発時代の流域治水:自治体における組織・法制・条例・土地利用・合意形成』(2024年3月、第一法規刊)として取りまとめた。
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本研究会において実施したアンケート調査の結果については、「都市自治体における水害に対する防災・減災のまちづくりに関するアンケート調査 資料編(調査の概要及び単純集計結果の一覧)」として公開している。
4.テーマに関する先行研究
土地利用行政のあり方に関する研究会(全国市長会との共同研究:2016-17年度)
5.研究会委員名簿
座長 | 内海 麻利 | 駒澤大学法学部 教授 |
委員 | 大谷 基道 | 獨協大学法学部総合政策学科 教授 |
田中 尚人 | 熊本大学大学院 先端科学研究部 准教授 | |
中村 晋一郎 | 名古屋大学大学院 工学研究科 准教授 | |
松川 寿也 | 長岡技術科学大学 工学部 准教授 |